昔から木造住宅を建ててきた工務店は、腹の中ではほぼすべての工務店が「どんな家でも作れる」と思っています。
木造在来工法は、もともと、そういう工法です。
建築基準法や耐震等級による強度の設定条件もありますから、昔に比べれば強度を保つための制約はいろいろありますが、それでも結局、間取りに始まって、外観のデザイン、内装のデザイン、設備機器、その他、何でもかんでも自由になります。
要するに「お客さんの好みに合わせてどんな建物でも自由自在に作れます。」というのが本音です。
和風数寄屋造りがお客さんの好みであれば、織り上げ格天井をあしらって、純和風のごつい和室を作りましょう、と言えますし、シティホテルで暮らすような内装の仕上げが好みであれば、シンプルでおしゃれな外観の中に、間接照明をあしらった上品な空間も作れます。
私たち地場の小さな工務店は、目の前のお客さんの好みやこの先何十年にも及ぶその場所での生活の予定を徹底的に聞き取りし、理解し、そしてその方に一番合う形のオーダーメイドの家をつくっていく存在です。
たとえば、大手ハウスメーカーさんの、誰もがわかる特徴のあるセンスのよいデザインの家を実際に作っているのは誰でしょう?
本社工場から職人さんが現地まで派遣されてくるわけではありません。
実際に作っているは必ず地元の下請けの工務店さんです。
そして、あるハウスメーカーさん一社だけ専属でずっとやっている会社というのはかなり少なく、いろんな会社さんの下請けをしているケースの方が普通です。ということは、その地元の工務店さんは、どんなデザインの家でも作れるということです。
下請けの工務店さんでもそうなんです。
普段から一般のお客さんを相手にしている元請けの地場の工務店は、いろんなお客さんの要求にこたえるべく日々切磋琢磨しています。
しかし、何でもかんでも作れますという話を前面に出すと、お客さんから見てわかりにくくなるので、ある程度の規模になってくると「わかりやすいデザイン」「わかりやすい工法」「わかりやすい断熱性能」「わかりやすい特色」を出そうとするようになるわけです。
どんな要求にも答えられるオーダーメイド専門のテーラーがどんどんつぶれ、ユニクロに長蛇の列ができる現象と同じようなことです。
けれどこのケースがわかりやすいのは、オーダーメイドのスーツは高く、ユニクロは安いので、当然そうなるでしょう。
ところが、こと住宅に関して言うと、オーダーメイドの家づくりをする工務店の方が、画一的なデザインや工法で家をつくるハウスメーカーさんよりも安いという逆転現象が起きます。
これはすごく単純なことです。
住宅展示場の経費や、テレビCM、有名タレントのギャラ、立派なパンフレットの製作費などの販売経費を、下請けの工務店の工賃をどれだけ抑えても、建築してくれるお客さんからもらわないと会社が成り立たないからです。
見積もり金額の、2割から3割くらいは広告宣伝費の施主負担という計算結果もあります。
ただし、もちろん、それが悪いという意味ではありません。各会社いろいろなやり方があります。
その宣伝経費によって、会社の名前は知れ渡り、そのためにブランドができているわけで、そのハウスメーカーさんで建てた人は、「あの有名な会社の家に住んでいる」という満足感を感じられるかもしれません。
そこは、一人一人の家を建てるお施主さんの考え方次第になります。
この記事で言いたいのは、小さな工務店はみな、オーダーメイド住宅の気概を持って家を建てていますので、小さな工務店で家を建てるときには、いろんな希望をきちんと言ってあげてください。要望に応えて新しい家で幸せな生活をしてもらおうと、一生懸命がんばって家をつくる工務店さんの姿が見られるでしょう。